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宇都宮地方裁判所 平成4年(行ウ)6号 判決 1998年4月15日

宇都宮市下栗町二三〇一番七

原告

株式会社リック

右代表者代表取締役

市川之一

右訴訟代理人弁護士

竹澤東彦

中村隆

宇都宮市昭和二丁目一番七号

被告

宇都宮税務署長 早川榮一

右指定代理人

竹村彰

田部井敏雄

熊谷悦朗

手塚俊文

飯山利男

田村利郎

山本廣美

谷田部浩

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が平成元年四月二一日付けでした、原告の昭和六一年一二月一日から昭和六二年一一月三〇日までの事業年度以降の法人税の青色申告の承認の取消処分を取り消す。

二  被告がいずれも平成元年四月二六日付けでした、原告の昭和五八年一二月一日から昭和五九年一一月三〇日までの事業年度、同年一二月一日から昭和六〇年一一月三〇日までの事業年度及び同年一二月一日から昭和六一年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての重加算税の各賦課決定をいずれも取り消す。

三  被告が平成元年四月二六日付けでした、原告の昭和六一年一二月一日から昭和六二年一一月三〇日までの事業年度の法人税の更正並びに重加算税及び過少申告加算税の各賦課決定(裁決により一部取り消された後のもの。)を取り消す。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、住所地所在の事業所において、不動産売買及び仲介業を営む株式会社であり、その法人税につき、被告から青色申告の承認を受けていた者である。

2  原告は、被告に対し、昭和五八年一二月一日から昭和五九年一一月三〇日までの事業年度、同年一二月一日から昭和六〇年一一月三〇日までの事業年度、同年一二月一日から昭和六一年一一月三〇日までの事業年度及び同年一二月一日から昭和六二年一一月三〇日までの事業年度(以下それぞれ「昭和五九年一一月期」、「昭和六〇年一一月期」、「昭和六一年一一月期」及び「昭和六二年一一月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、それぞれその法定申告期限内に、別表一ないし四記載のとおり青色申告による確定申告をした。

3  被告は、原告に対し、平成元年四月二一日付けで、昭和六二年一一月期以降の事業年度について、法人税の青色申告の承認を取り消す旨の処分(以下「本件青色申告承認取消処分」という。)をするとともに、これに伴い、平成元年四月二六日付けで、原告の本件各事業年度の法人税について、別表一ないし四記載のとおり、各更正並びに重加算税及び過少申告加算税の各賦課決定をした(以下、昭和五九年一一月期ないし昭和六二年一一月期の法人税に係る各重加算税賦課決定を併せて「本件各重加算税賦課決定」といい、昭和六二年一一月期の法人税の更正を「本件更正」、同期の過少申告加算税賦課決定を「本件過少申告加算税賦課決定」という。また、これら全てを総称して「本件各課税処分」ということがある。)。

4(一)  原告は、被告に対し、本件青色申告承認取消処分並びに本件更正、本件過少申告加算税賦課決定及び昭和六二年一一月期の法人税の重加算税賦課決定については平成元年六月二〇日に、昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期の法人税の各重加算税賦課決定については平成元年六月二六日に、それぞれ異議申立をしたが、被告は、同年一二月二二日付けで、これをいずれも棄却する旨の決定をなした(原告は、昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期の法人税の各更正については、不服申立をなしていない。)。

(二)  原告は、国税不服審判所長に対し、本件各課税処分につき、平成二年一月二六日にそれぞれ審査請求をしたが、同所長は、平成四年六月二二日付けで、本件更正、本件過少申告加算税賦課決定及び昭和六二年一一月期の法人税の重加算税賦課決定について別表四記載のとおりその一部を取り消す旨の裁決をしたが、その余の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。

5  原告が、本件各課税処分(本件更正、本件過少申告加算税賦課決定及び昭和六二年一一月期の法人税の重加算税賦課決定については、裁決により一部取り消された後のもの)はいずれも違法であるとして、被告に対し、その取消を求めたのが本件である。

二  争点

1  本件更正の適否

(一) 被告の主張

(1) 所得金額について

原告の昭和六二年一一月期の所得金額は、一億八二九八万七〇九九円(別表四裁決欄記載のとおり)であり、その計算根拠は次のとおりである。

ア 申告所得金額 四一八〇万二一五一円

原告の確定申告に係る所得金額である。

イ 給料手当の損金不算入額 三三八万六〇八〇円

原告は、千代田礼子(以下「千代田」という。)に対し二五七万六〇八〇円、中沢和子(以下「中沢」という。)に対し八一万円、合計三三八万六〇八〇円を給料手当として支給したとし、これを損金の額に算入して確定申告をしているが、右両名が昭和六二年一一月期において原告に勤務した事実はなく、右給料手当は架空のものである(原告は、そのため千代田及び中沢名義の普通預金口座を東陽相互銀行〔現つくば銀行〕宇都宮支店にそれぞれ開設していた。なお、千代田名義の普通預金からは、その後、毎月一定額が同人名義の定期積金等に振り替えられた。)から、損金の額に算入することはできない。したがって、右金額を原告の所得金額に加算すべきである。

ウ 手数料収入の益金算入額 四五五万九一九〇円

右金額は、原告が、専務取締役である市川勇(以下「市川専務」という。)の有する土地家屋調査士の資格を利用して行った土地建物の登記等に関する手数料収入のうち、原告において益金に計上漏れとなっていた金額である(後記のとおり、原告は、右収入をいわき信用組合泉支店に開設した土地家屋調査士市川勇名義の普通預金口座を用いて除外していた。以下「本件手数料収入」という。)。

エ 雑収入の益金算入額 五一九万五一二八円

右金額は、次の(ア)及び(イ)の合計額であり、これを雑収入として原告の所得金額に加算すべきである。

(ア) 家賃広告収入の益金算入額 五〇〇万円

右金額は、別紙物件目録記載の土地及び建物(以下「本件不動産」という。)の売買により生ずる収益(家賃及び看板広告料)のうち、原告において計上漏れとなっていた金額である。

(イ) 敷地使用料収入の益金算入額 一九万五一二八円

右金額は、福島県いわき市所在の原告所有の分譲地(泉ケ丘ハイタウン)に設置された東北電力株式会社の電柱及び日本電信電話株式会社の電話ボックスに係る敷地使用料収入(以下「本件敷地使用料収入」という。)の金額であって、益金として算入すべきものであったにもかかわらず、原告において計上漏れとなっていた金額である(後記のとおり、原告は、右収入を東邦銀行小名浜支店に開設した株式会社市川いわき営業所長田沼勇名義の普通預金口座を用いて除外していた。)。

オ 受取利息の益金算入額 一〇万二三五七円

右金額は、右イ、ウ、エ(イ)の各普通預金及び後記のとおり原告が固定資産税等還付金等の収入を除外するために開設した協和銀行宇都宮支店の原告名義の普通預金(千代田名義の普通預金から派生する定期積金等を含む。)に係る利息の合計額であるが、右各預金(簿外預金)が原告に帰属するものであることは右イ、ウ、エ(イ)のとおりであるから、これらに係る受取利息等についても原告に帰属することは明らかである(別表五参照)。したがって、右金額を益金として原告の所得金額に加算すべきである。

カ 雑費の損金算入額 一八万〇七二〇円(減算)

右金額は、原告が前記エ(イ)の本件敷地使用料収入のうち、売却済みの土地に係る部分をその正当な受領権利者である土地の新所有者に支払っているため、損金として認容した金額である。

キ 賞与引当金の損金算入額 二六万二〇三六円(減算)

右金額は、原告が前事業年度(昭和六一年一一月期)において引き当てた賞与引当金七四七万円を、昭和六二年一一月期において全額戻し入れていることに伴い、前事業年度において右賞与引当金のうち繰入限度超過額として損金不算入となっていた頭金金額を、昭和六二年一一月期の損金として認容したものである(法人税法五四条一項ないし三項、同法施行例一〇三条一項、二項及び四項)。

ク 事業税の損金算入額 八二万七九〇〇円(減算)

右金額は、前事業年度において原告の申告所得金額に加算された所得に対し課税される事業税を損金として認容した金額である(法人税基本通達九-五-二)。

ケ 寄附金の損金不算入額 一億二九二一万二八四九円

原告は、本件不動産につき、売主を三芳長治(以下「三芳」という。)、買主を株式会社ジャパンオール(以下「ジャパンオール」という。)として昭和六二年六月三〇日付けで締結された売買契約(以下「本件第一契約」という。)又は売主をジャパンオール、買主を原告として同日付けで締結された売買契約(以下「本件第二契約」という。)を締結するに際し、株式会社清和(以下「清和」という。)及び日本都市開発株式会社(以下「日本都市開発」という。)に仲介手数料としてそれぞれ一一〇〇万円及び一億二〇〇〇万円を支払ったとし、これを損金の額に算入して確定申告をした。しかしながら、本件不動産の売買において、清和及び日本都市開発が仲介行為を行った事実はないから、原告が右両社に支払った右各金員には、何ら対価性が認められないものである。したがって、右金員は、法人税法三七条に規定する寄付金に当たるものであるから、同条二項及び同法施行令七三条の規定により、清和及び日本都市開発に支払った右各金員の合計一億三一〇〇万円のうち寄付金の損金算入限度額を超える一億二九二一万二八四九円(その計算根拠は別表六のとおり)は、損金の額に算入できないものであり、原告の所得金額に加算されるべきものである。

コ 所得金額 一億八二九八万七〇九九円

原告の昭和六二年一一月期の所得金額は、前記アにイないしオ及びケを加算し、カないしクを減算した頭金金額である(別表九参照)。

(2) 課税土地譲渡利益金額 八億九五一〇万二〇〇〇円

ア 本件土地に係る譲渡利益金額 八億九〇七四万五九四〇円

(ア) 原告は、昭和六二年九月二五日、ジャパンオールから本件不動産を取得し、これを同月三〇日に喜多商事株式会社(以下「喜多商事」という。)に譲渡したのであるから、本件不動産のうち、本件土地の譲渡に係る譲渡代金部分については、その譲渡利益金額の一〇〇分の二〇の割合を乗じて計算した金額が法人税の額に加算されることとなる(昭和六二年法律第一四号による改正前の租税特別措置法〔以下「昭和六二年改正前措置法」という。〕六三条)。

原告は、右売買契約において土地と建物を一括譲渡したものであるから、土地譲渡利益金額の算定に当たっては、その譲渡対価の額のうち土地の対価の額に相当する部分と建物の対価の額に相当する部分とを合理的に区分する必要があるところ、被告は、次のとおり、固定資産税及び都市計画税の課税標準額による按分計算の方法により、合理的に対価の区分を行ったものである。

(イ) 譲渡収益の額 八八億六四一八万八五六〇円

本件不動産の譲渡価額は九〇億四一四〇万円であるところ、昭和六二年度における本件土地の固定資産税及び都市計画税の課税標準額は四億八一一四万五〇〇〇円、同年度における本件建物の同標準額は九五九万七〇〇〇円であるから、その合計額に対する本件土地の割合は九八・〇四パーセントとなり、本件不動産の譲渡価額に右割合を乗ずると、本件土地の譲渡に係る収益の額は八八億六四一八万八五六〇円となる。

(ウ) 譲渡原価の額 七九億〇七五四万六四〇〇円

本件土地の譲渡に係る原価の額は、本件土地の譲渡直前の帳簿価額(平成三年政令第八八号による改正前の租税特別措置法施行令〔以下「平成三年改正前措置法施行令」という。〕三八条の四第五項一号イ)、すなわち、譲渡直前における本件土地の取得価額に算入すべき金額であるが、右金額は、原告がジャパンオールから本件不動産を一括取得した際の購入価額八〇億円に前記割合九八・〇四パーセントを乗じて算出した七八億四三二〇万円、本件不動産の取得に際して要した土地測量費二五八万一二〇〇円及び本件不動産の取得に際して原告がジャパンオールから引き継いだ本件建物の賃貸権者等に対する敷金等の債務六三〇〇万円に前記割合九八・〇四パーセントを乗じて算出した六一七六万五二〇〇円の合計額七九億〇七五四万六四〇〇円となる。

(エ) 直接又は間接に要した経費の額 六五八九万六二二〇円

A 譲渡した土地等の帳簿価額の累計額 六億五八九六万二二〇〇円

前記(ウ)の本件土地の譲渡に係る原価の額七九億〇七五四万六四〇〇円に保有期間である一月を乗じ、これを一二で除した金額である。

B 負債利子の額 三九五三万七七三二円

右Aに一〇〇分の六の割合を乗じて計算した金額である(平成三年改正前措置法施行令三八条の四第六項一号及び同条七項)。

C 販売費及び一般管理費の額 二六三五万八四八八円

右Aに一〇〇分の四の割合を乗じて計算した金額である(平成三年改正前措置法施行令三八条の四第六項二号及び同条七項)。

D 本件土地の譲渡のために直接又は間接に要した経費の額は、右B及びCの合計額である。

(オ) 本件土地に係る課税土地譲渡利益金額 八億九〇七四万五九四〇円

本件土地に係る譲渡利益金額は、前記(イ)の金額から(ウ)及び(エ)の金額の合計額を差し引いた八億九〇七四万五九四〇円である。

イ 本件土地以外の土地の昭和六二年改正前措置法六三条に係る譲渡利益金額の合計額 二三八万四八一二円

右金額は、確定申告に係る金額である(争いがない。)。

ウ 昭和六三年法律第一〇九号による改正前の租税特別措置法(以下「昭和六三年改正前措置法」という。)六三条の二に係る譲渡利益金額の合計額 一九七万二六四一円

右金額は、確定申告に係る金額である(争いがない。)。

エ 昭和六二年一一月期の課税土地譲渡利益金額の合計額 八億九五一〇万二〇〇〇円

昭和六二年一一月期の課税土地譲渡利益金額の合計額は、前記アないしウの合計である八億九五一〇万二〇〇〇円(国税通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数切り捨て。前記ア、イの合計八億九三一三万円と前記ウの一九七万二〇〇〇円の合計額)である。

(3) 原告の納付すべき法人税額

ア 所得金額に対する税額 七五八九万四五四〇円

原告の昭和六二年一一月期の所得金額は、前記(1)のとおり、一億八二九八万七〇九九円であるところ、それに対する税額は、昭和六三年法律第一〇九号による改正前の法人税法六六条二項の規定により、右所得金額のうち八〇〇万円については一〇〇分の三〇の税率を、同条一項の規定により、残額の一億七四九八万七〇〇〇円(国税通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数切捨て)については一〇〇分の四二の税率を、それぞれ乗じた七五八九万四五四〇円である。

イ 課税土地譲渡利益金額に対する税額 一億七九二一万七六〇〇円

(ア) 昭和六二年改正前措置法六三条に係る譲渡利益金額に対する税額 一億七八六二万六〇〇〇円

原告の昭和六二年改正前措置法六三条に係る譲渡利益金額の合計額は、前記(2)のとおり、八億九三一三万〇七五二円であるので、同条の規定により、法人税額に加算すべき金額は、右合計額八億九三一三万円(国税通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の二〇の割合を乗じた一億七八六二万六〇〇〇円である。

(イ) 昭和六三年改正前措置法六三条の二に係る譲渡利益金額に対する税額 五九万一六〇〇円

原告の昭和六三年改正前措置法六三条の二に係る譲渡利益金額の合計額は、前記(2)のとおり、一九七万二六四一円であるので、同条の規定により、法人税額に加算すべき金額は、右合計額一九七万二〇〇〇円(国税通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数切捨て)に一〇〇分の三〇の割合を乗じた五九万一六〇〇円である。

ウ 納付すべき法人税額 二億四六七〇万〇七〇〇円

原告の昭和六二年一一月期の納付すべき法人税額は、右アとイの合計額である二億五五一一万二一四〇円から、利子・配当等の収入についてすでに源泉徴収されていた税額八四一万一四一〇円を控除(法人税法六八条一項)した後の二億四六七〇万〇七〇〇円(国税通則法一一九条一項の規定により一〇〇円未満の端数切捨て)である。

(4) 原告が納付すべき法人税額は、前記のとおり、二億四六七〇万〇七〇〇円であるところ、本件更正(裁決により一部取り消された後のもの)に係る納付すべき法人税額は、右と同額であるから、本件更正は適法である。

(二) 原告の主張

(1) 所得金額について

被告は、次のとおり、原告の所得金額を過大に認定した(なお、その余の点については当事者間に争いがない。)。

ア 給料手当について

千代田及び中沢に支給した給料手当の額三三八万六〇八〇円は、次のとおり、原告に勤務した正当な対価として実際に支給していたものであるから、損金の額に算入されるべきである。

千代田は、福島県いわき市の分譲建売住宅(泉ケ丘ハイタウン)に関する情報収集等を、中沢は、長野県方面のリゾート地に関する情報収集等を、それぞれ原告の在宅勤務として行っていた。原告は、千代田及び中沢に対する給料手当を東陽相互銀行宇都宮支店に開設した同人ら名義の普通預金口座にそれぞれ振り込む方法で支払ったが、同人らからの申出により、市川専務が右預金口座に係る通帳等を管理していたものである。

イ 受取利息について

千代田及び中沢名義の普通預金及び千代田名義の定期積金等(同人名義の普通預金から振り替えたもの)は、右アのとおり、同人らの給料手当を振り込んで実際に支給したものであって、原告に帰属するものではないから、これらに係る受取利息、給付補填金一〇万二三五七円は、益金として原告の所得金額に加算すべきものではない。

ウ 寄付金について

原告は、本件第二契約に係る仲介手数料として、日本都市開発に一億二〇〇〇万円、清和に一一〇〇万円をそれぞれ支払い、右合計額一億三一〇〇万円を損金に算入したところ、被告はこれを寄付金と認定し、損金算入の限度額を超える一億二九二一万二八四九円については損金不算入とした。しかし、右金額は、次のとおり、仲介行為の対価として実際に支払った手数料であるから、全額損金に算入すべきものである。

日本都市開発(東京支社の従業員)は、原告が本件第二契約を締結するに当たり、契約締結時から本件不動産の引渡までの間、土地の境界確認、建物の現況、賃貸の状況、債権債務の調査、重要事項説明書の作成等、その実現のために有用な仲介業務を現実に行った。

清和は、本件第一契約に係る仲介をしたが、この際に、ジャパンオールは、清和に対し、本件不動産を他に譲渡する場合には、清和に仲介を委託する旨を口頭で約束していたこと、さらに、清和は、すでに数社と本件不動産の商談を進めていたことから、仲介手数料を支払ったものである。

(2) 課税土地譲渡利益金額について

被告は、次のとおり、原告の課税土地譲渡利益金額(本件土地に係る譲渡利益金額の分)を過大に認定した(なお、その余の点については当事者間に争いがない。)

ア 譲渡対価の区分について

原告は、昭和六二年九月一八日、喜多商事に対し、本件不動産を代金九〇億四一四〇万円で一括譲渡する旨の売買契約(以下「本件第三契約」という。)を締結したが、本件土地に係る課税土地譲渡利益金額の計算に当たっては、本件不動産の譲渡対価の額を次のとおり区分計算すべきである。

(ア) 不動産の取引価格は、売主及び買主の間における需要と供給との関係により任意に定められるものであるところ、本件第一契約は、売渡物件の総額に対し、土地代金を三三・三パーセント、建物代金を六六・七パーセントとして取引する旨の相互協議により成立したものであるから、本件不動産の譲渡対価の区分計算もそれに従い、本件土地を三三パーセント、本件建物を六七パーセントの割合で区分する計算方法によるべきである。

(イ) 仮に、右(ア)の計算方法が採用できないとしても、本件各契約がテナントの有する建物賃借権を継続したまま締結されたものであり、安定した家賃収入を確保するために借家人の経済状況及び入居実績等を重要な判断材料にして取引されたことにかんがみると、本件不動産の譲渡対価の区分計算は、次のA又はBの計算方法によるべきである。

A 収益還元による方法

本件建物に係る昭和六二年当時の年間賃貸料収入六九五六万四〇〇〇円をもとにして、本件建物から将来的に期待される総収入を算定すると、別表七記載のとおり約三〇億円となり、右金額から想定される減価償却費、固定資産税等の総費用約二億円を控除すると、本件建物の価額は約二八億円となり、本件土地の価額は約六二億円となる。

B 投資効率による方法

不動産に対する投資効率からみると、東京周辺における家賃収入は年率三パーセント前後であるから、本件不動産の年間賃貸料収入六九五六万四〇〇〇円をもとにして逆算すると、本件建物の価額は約二四億円となり、本件土地の価額は約六六億円となる。

(ウ) 固定資産税の課税標準額における土地は、自用地か貸地であるかの条件を考慮されず、更地価格で評価されており、本件のように貸家の用に供している土地については何ら斟酌されていないから、本件において固定資産税の課税標準額をもとにした被告の区分計算の方法には合理性がない。

イ 譲渡収益の額 二九億八三七〇万円

本件土地の譲渡収益の額は、本件不動産の譲渡対価の額九〇億四一四〇万円に前記ア(ア)の三三パーセントを乗じ、二九億八三七〇万円(一万円未満四捨五入)と算定すべきである。

ウ 譲渡原価の額 二七億八六一六万一一二五円

本件土地の譲渡原価の額は、次のとおり、二七億八六一六万一一二五円と算定すべきである。

(ア) 仕入 二六億四〇〇〇万円

本件不動産の購入金額八〇億円に前記ア(ア)の三三パーセントを乗じて計算した額である。

(イ) 借入利息 六七三万四〇〇七円

オリエント・リース株式会社(現商号オリックス株式会社。以下「オリエント・リース」という。)に借入利息として支払った二〇四〇万六〇八二円に前記ア(ア)の三三パーセントを乗じて計算した額である。

(ウ) 業務委託費 八二五〇万円

オリエント・リースに業務委託費として支払った二億五〇〇〇万円に前記ア(ア)の三三パーセントを乗じて計算した額である。

(エ) 土地測量費 二五八万一二〇〇円

有限会社内藤測量設計管理事務所(以下「内藤測量」という。)に土地測量費として支払った金額である。

(オ) 仲介手数料 五六四三万円

原告は、本件不動産の仲介手数料としてフジタ工業株式会社(以下「フジタ工業」という。)に四〇〇〇万円、日本都市開発に一億二〇〇〇万円、清和に一一〇〇万円をそれぞれ支払ったので、その合計額一億七一〇〇万円に前記ア(ア)の三三パーセントを乗じて計算すると頭書金額となる。

(カ) 固定資産税負担分 二〇八万四〇八二円(減算)

固定資産税負担分として喜多商事から受け取った金額である。

(キ) 譲渡原価の額は、右(ア)ないし(オ)の合計から(カ)を控除した二七億八六一六万一一二五円である。

エ 直接又は間接に要した経費の額 二三二一万八〇〇八円

(ア) 譲渡した土地等の帳簿価額の累計額 二億三二一八万〇〇九三円

前記ウの譲渡原価の額二七億八六一六万一一二五円に保有期間である一月を乗じ、これを一二で除した金額である。

(イ) 負債利子の額 一三九三万〇八〇五円

右(ア)に一〇〇分の六の割合を乗じて計算した金額である。

(ウ) 販売費及び一般管理費の額 九二八万七二〇三円

右(ア)に一〇〇分の四の割合を乗じて計算した金額である。

(エ) 本件土地の譲渡のために直接又は間接に要した経費の額は、右(イ)及び(ウ)の合計額である。

オ 本件土地に係る譲渡利益金額 一億七四三二万〇八六七画

本件土地に係る譲渡利益金額は、前記イからウ及びエの合計を控除した一億七四三二万〇八六七円である。

カ 昭和六二年一一月期の課税土地譲渡利益金額の合計額 一億七八六七万七〇〇〇円

原告の昭和六二年一一月期の課税土地譲渡利益金額の合計額は、右オの本件土地に係る譲渡利益金額に、本件土地以外の土地の昭和六二年改正前措置法六三条に係る譲渡利益金額の合計額二三八万四八一二円及び昭和六三年改正前措置法六三条の二に係る譲渡利益金額の合計額一九七万二六四一円を加えた一億七八六七万七〇〇〇円(国税通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数切捨て)である(本件土地以外に係る部分については争いがない。)。

(3) 以上のとおりであるから、被告のなした本件更正には、所得金額及び本件土地に係る譲渡利益金額を過大に認定した違法がある。

2  本件各重加算税賦課決定の適否

(一) 被告の主張

(1) 原告は、昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期の法人税の各更正を争っておらず、また、本件更正(昭和六二年一一月期)が適法であることは、前記のとおりであるところ、右各更正に係る増加所得金額、そのうち重加算税の対象となる金額の内訳は、別表八記載のとおりである。

原告は、以下項目別に述べるとおり、右重加算税の対象につき、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺい又は仮装し、それに基づき納税申告書を提出した。

ア 給料手当

前記のとおり、原告は、勤務実態のない千代田及び中沢に対し、給料手当名下で右両名名義の預金口座に振込入金することにより、あたかも正当に給料手当を支給したような外形を創出し、右金額を損金として計上していたものであって、これが国税通則法(昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期については昭和六二年法律第九六号による改正前のものをいう。以下同じ。)六八条にいう隠ぺい又は仮装にあたることは明らかである。

イ 手数料収入

原告は、本件手数料収入が原告に帰属するものであることを認識していたにもかかわらず、これを益金の額から除外するために、昭和六一年一月一六日、あえて簿外の本件手数料収入口座(いわき信用組合泉支店の土地家屋調査士市川勇名義の普通預金口座。口座番号七〇〇〇一五一)を開設し、本件手数料収入を入金していたものであるから、これが国税通則法六八条にいう隠ぺい又は仮装にあたることは明らかである。

ウ 雑収入

(ア) 家賃広告収入

本件不動産に係る建物賃貸料三三五万円及び看板広告料二四四万七〇〇〇円、計五七九万七〇〇〇円は、本件不動産から生ずる収益であり、本件各契約における各譲受人に帰属するものとして譲渡人から支払われるべきものであるところ、本件第一契約に際しては三芳からジャパンオールへ、本件第三契約に際しては原告から喜多商事へと、それぞれ右金員が支払われている。右経緯に照らすと、原告は、本件第二契約に際しジャパンオールから受け入れるべき右金員の一部(益金の額に算入した七九万七〇〇〇円を除く五〇〇万円)を益金の額に算入すべきことを十分認識していたにもかかわらず、これを除外していたものというべきであるから、これが国税通則法六八条にいう隠ぺい又は仮装にあたることは明らかである。

(イ) 敷地使用料収入

原告は、本件敷地使用料収入(泉が丘ハイタウンの土地に設置された東北電力株式会社の電柱及び日本電信電話株式会社の電話ボックスに係る敷地使用料収入)が原告に帰属するものであることを認識していたにもかかわらず、これを益金の額から除外するために、昭和五九年一〇月四日、簿外の本件敷地使用料収入口座(東邦銀行小名浜支店の株式会社市川いわき営業所長田沼勇名義の普通預金口座。口座番号三八五四〇八)を開設し、これをもって本件敷地使用料収入が原告に帰属しないような外観を創出したものであり、これが国税通則法六八条にいう隠ぺい又は仮装にあたることは明らかである。

(ウ) 固定資産税等還付金

原告は、本件固定資産税等還付金(原告が納付した固定資産税のうち地目修正に基づく税額の減少による還付金及び過納による還付金並びに地方税法七三条の二四に規定する不動産取得税の減免額の還付金)が原告に帰属するものであることを認識していたにもかかわらず、これを益金の額から除外するために、昭和五九年七月一二日、簿外の本件固定資産税等還付金口座(協和銀行〔現あさひ銀行〕宇都宮支店の原告名義の普通預金口座。口座番号八七三六〇二)を開設し、これをもって本件固定資産税等還付金が原告に帰属しないような外観を創出したものであり、これが国税通則法六八条にいう隠ぺい又は仮装にあたることは明らかである。

(エ) 保険金収入

原告は、本件保険金収入(原告所有の車両に係る交通事故により、加害者が加入する損害保険会社から給付を受けた保険金及び市川専務の病気入院に伴い、原告が加入する生命保険会社から給付を受けた保険金)が原告に帰属するものであることを認識していたにもかかわらず、これを益金の額から除外するために、あえて簿外の本件固定資産税等還付金口座に振込入金させ、これをもって本件保険金収入が原告に帰属しないような外観を創出したものであり、これが国税通則法六八条にいう隠ペい又は仮装にあたることは明らかである。

エ 受取利息

原告において仮装給料賃金及び除外収入に関し、簿外としていた「千代田名義口座」「中沢名義口座」「本件手数料収入口座」「本件敷地使用料収入口座」「本件固定資産税等還付金口座」並びに千代田名義口座から派生した定期積金及び定期預金が原告に帰属するものであり、原告においてもこれを認識していたと認められることは前記のとおり明らかであり、また、原告は、右各預金以外の預金に係る受取利息は益金に計上していることにかんがみれば、右各預金に係る受取利息を益金の額に算入すべきことを認識していたにもかかわらず、あえてこれを除外していたものというべきであるから、これが国税通則法六八条にいう隠ぺい又は仮装にあたることは明らかである。

オ 寄付金の損金不算入額(日本都市開発分)

前記のとおり、原告は、日本都市開発が本件第二契約に関し、仲介行為を行った事実がないのに、あたかも右仲介行為が存したかのような外形(前記のとおり、原告は、右仲介行為を仮装すべく、重要事項説明書、委任契約書等を作成した。)を創出し、これに基づいて経理処理していたのであるから、これが国税通則法六八条にいう隠ぺい又は仮装にあたることは明らかである。

(2) 昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期について

原告は、昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期の法人税の各更正を争っておらず、かつ、前記のとおり、原告は、本来、そのそれぞれの収入については、収入として益金に計上すべきであること、また、そのそれぞれの支出については、それが損金不算入となることを認識していたにもかかわらず、右(1)のとおりの隠ぺい仮装行為をし、これに基づき昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期の法人税の各確定申告書を作成、提出していたのであり、被告は、本件更正により新たに納付すべきこととなった法人税額(国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨て後の金額)を基礎として、昭和六二年法律第九六号による改正前の国税通則法六八条一項の規定に基づき、各重加算税を賦課決定したものであるから、昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期の各重加算税賦課決定はいずれも適法である。

(3) 昭和六二年一一月期について

本件更正が適法であることは、前記のとおりであり、かつ、右(1)のとおりの隠ぺい仮装行為をし、これに基づき法人税の各確定申告書を作成、提出していたのであり、被告は、本件更正により新たに納付すべきこととなった法人税額のうち、右隠ぺい仮装行為でない事実に基づく税額として国税通則法施行令二八条一項で定めるところにより計算した金額を控除した後の税額(国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨て後の金額)を基礎として、国税通則法六八条一項の規定に基づき、重加算税を賦課決定したものであるから、昭和六二年一一月期の重加算税賦課決定(裁決により一部取り消された後のもの)は適法である。

(二) 原告の主張

原告の行為は、次のとおり、国税通則法六八条一項の「隠ぺい又は仮装」に該当しないから、本件各重加算税賦課決定は違法であり、取り消されるべきである。

(1) 給料手当

原告は、前記のとおり、千代田(昭和五九年一一月期ないし昭和六二年一一月期)及び中沢(昭和六一年一一月期及び昭和六二年一一月期)に対し、原告に勤務した正当な対価として給料手当を実際に支払っていたものであるから、これにつき、隠ぺい、仮装の行為は存しない。

(2) 手数料収入

市川専務が有する土地家屋調査士の資格を使用して行った土地、建物の登記等に係る手数料収入のうち、昭和六〇年一一月期七八万二〇〇〇円、昭和六一年一一月期三四一万円、昭和六二年一一月期四五五万九一九〇円、合計八七五万一一九〇円が計上漏れとなったのは、原告いわき営業所の担当者(斉藤一俊)が過失により経理事務処理を失念していたためであって、意図的に隠ぺい、仮装したものではない。

(3) 雑収入

ア 家賃広告収入

家賃広告収入のうち、昭和六二年一一月期五〇〇万円が計上漏れとなったのは、単に計上することを失念したものであり、意図的に隠ぺい、仮装したものではない。

イ 敷地使用料収入

本件敷地使用料収入のうち、昭和五九年一一月期一六万〇五九五円、昭和六〇年一一月期四一万一一三一円、昭和六一年一一月期三一万五七七六円、昭和六二年一一月期一九万五一二八円、合計一〇八万二五三〇円が計上漏れとなったのは、原告のいわき営業所長(田沼勇。同人は、東邦銀行小名浜支店の原告いわき営業所長田沼勇名義の預金口座に右敷地使用料を年一回振り込ませ、管理していた。)が過失により経理事務処理を失念していたためであって、意図的に隠ぺい、仮装したものではない。

ウ 固定資産税等還付金

宇都宮市役所、県税事務所等から受領した固定資産税、自動車税等の還付金のうち、昭和五九年一一月期一二四万二三一〇円、昭和六〇年一一月期一〇五万〇九一〇円、昭和六一年一一月期一七万〇六九〇円、合計二四六万三九一〇円が計上漏れとなったのは、原告の担当者(業務課)が過失により経理事務処理を失念していたためであって、意図的に隠ぺい、仮装したものではない。

エ 保険金収入

富士火災株式会社及び安田生命保険相互会社から受領した受取保険金のうち、昭和五九年一一月期六万九三二〇円、昭和六一年一一月期四三万円、合計四九万九三二〇円が計上漏れとなったのは、原告の担当者(業務課)が過失により経理事務処理を失念していたためであって、意図的に隠ぺい、仮装したものではない。

(4) 受取利息

千代田及び中沢名義の各普通預金並びに千代田名義の定期積金等は、前記のとおり、原告に勤務した給料手当であり、同人らに帰属すのものである。また、前記のとおり、原告は、本件手数料収入口座、本件敷地使用料収入口座及び本件固定資産税等還付金口座を、所得を隠ぺい仮装する目的で開設したものではない。したがって、右預金等の原本の設定に隠ぺい、仮装はないから、これに従属する受取利息及び給付補填金(昭和五九年一一月期七五九九円、昭和六〇年一一月期七万一七三五円、昭和六一年一一月期一七万一七九九円、昭和六二年一一月期一〇万二三五七円、合計三五万三四九〇円)についても隠ぺい、仮装の行為は存しない。

(5) 寄付金の損金不算入額(日本都市開発分)

原告は、前記のとおり、日本都市開発に対し、本件第二契約の仲介行為をした正当な対価として仲介手数料を実際に支払っていたものであるから、これにつき、隠ぺい、仮装の行為は存しない。

3  本件過少申告加算税賦課決定の適否

(一) 被告の主張

本件更正が適法であることは、前記1のとおりであり、被告がした本件更正により新たに納付すべきこととなった法人税額のうち、前記2で述べた重加算税の対象となる税額以外の税額(国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨て後の金額)を基礎として、同法六五条一項の規定に基づき過少申告加算税を賦課決定したものであるから、被告がした昭和六二年一一月期の過少申告加算税賦課決定(裁決により一部取り消された後のもの)は適法である。

(二) 原告の主張

前記のとおり、本件更正は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い、本件過少申告加算税賦課決定についてもその一部を取り消すべきである。

4  本件青色申告承認取消処分の適否

(一) 被告の主張

法人税法一二七条一項三号は、青色申告の承認を受けた内国法人が、その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合には、当該事業年度までさかのぼって、その承認を取り消すことができると規定しており、この規定における「隠ぺい又は仮装」の意義は、国税通則法六八条にいう「隠ぺい又は仮装」と同義に解される。

原告は、前記のとおり、昭和六二年一一月期につき、簿外預金口座を用いて収入を除外したり、架空の給料賃金及び支払手数料を計上するなどの隠ぺい仮装行為をし、右隠ぺい仮装行為に基づいて帳簿書類を作成していたのであるから、被告が法人税法一二七条一項三号の規定に基づいて行った本件青色申告承認取消処分は適法である。

(二) 原告の主張

前記のとおり、原告が昭和六二年一一月期に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装した事実はないから、本件青色申告承認取消処分は違法であり、取り消されるべきである。

第三争点に対する判断

一  争点1(本件更正の適否)について

1  昭和六二年一一月期の所得金額について

(一) 給料手当について

(1) 証拠(乙八ないし一〇、二五ないし三〇、三一の1ないし5、三二の1ないし5、三三の1ないし9、三四、三五の1ないし3、三六ないし三八、六六、六七、証人月井安以)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次のとおりの事実が認められる。

ア 中沢和子は原告代表者、市川専務及び原告の常務取締役である市川亮の実姉(長女)、千代田礼子は実妹(三女)であり、中沢は昭和三九年七月から長野県中野市に、千代田は昭和五八年七月から福島県いわき市にそれぞれ居住している主婦である。千代田は、以前宇都宮市に居住し、原告に勤務していたことがあったが、昭和五八年に結婚(夫は日本都市開発に勤務する千代田健二である。)したのをきっかけに退職し、福島県いわき市に転居した(翌昭和五九年五月には長女を出産している。)。中沢は、原告に勤務したことはない。

イ 千代田名義の普通預金口座(東陽相互銀行宇都宮支店 口座番号二四五五八五)は、昭和五八年七月二一日に開設され、以後、給料として月額一一万円ないし一六万円程度が、賞与(年二回)として一七万円ないし三六万円程度が原告から振込入金されていたが、平成元年四月一〇日に解約された。なお、昭和五九年八月一〇日以降、右口座から毎月一四万円が払い戻され、同人名義の定期積金ないし定期預金が設定されているところ(乙三〇)、右定期預金の一部については、昭和六一年一〇月一日、市川専務及び市川亮常務の指示により解約され、同日、市川亮名義の預金口座を経て、原告名義の預金口座に入金されている。千代田名義の各口座の開設、払戻、振込等の手続、預金通帳及び届出印の保管等については、市川専務の指示に基づき、もっぱら原告従業員の月井安以(本件当時、経理担当の課長ないし次長。以下「月井課長」という。)が行っており、千代田本人は関与しなかった。

ウ 中沢名義の普通預金口座(東陽相互銀行宇都宮支店 口座番号二六二九七三)は、昭和六一年六月二三日に開設され、以後、給料として月額五万二〇〇〇円程度が振り込まれていたが、千代田名義と同じく、平成元年四月一〇日に解約された。右口座についても、千代田名義の口座と同様、月井課長が管理しており、中沢本人は関与しなかった。なお、右口座の開設から解約までの間、一度も預金の払戻はなされていない(乙三六)。

エ 昭和六三年九月二〇日、原告に対する査察調査が行われた。右査察調査の際、市川専務は、担当査察官に対し、「給料手当は、実際には千代田及び中沢のところにいっていないが、原告から給料手当を出していることにして経費として落とせば原告の税金が安くなると思ってやった。千代田及び中沢名義の預金については、原告へ受け入れたいと思う。」旨述べ、同人らに対する給料手当の支払が架空であることを認めた。

オ 市川専務は、国税不服審判所に対し、千代田及び中沢名義の預金の管理は同人が行い、預金通帳の保管は月井課長が行っていたこと、千代田及び中沢名義の預金は、平成元年四月一〇日解約し、解約金は原告に渡したことを述べた。

カ 原告は、平成二年四月一一日、被告に対し、昭和六三年一一月期及び平成元年一一月期について、千代田及び中沢に対する給料手当分を所得金額に加算した修正申告書を提出した。

(2) 右(1)に認定した事実によれば、原告は、千代田及び中沢名義に係る前記各預金口座を開設し、これに架空の給料手当を振り込む方法で同人らに対する給料手当の支給を仮装し、過大に経費を計上していたものと認めるのが相当であるから、右金額(三三八万六〇八〇円)は、原告の所得金額に加算されるべきものである。

これに対し、原告は、千代田及び中沢は、不動産に関する情報収集等の業務を在宅で行っていたものであり、本件給料手当は正当な対価である旨主張するが、同人らが給料振込用の口座を遠隔地である宇都宮市内の銀行に開設する合理的理由がないこと、同人らは、右口座の開設から解約に至るまで、一度も払戻を受けることなく放置していること、市川専務らの指示により、千代田名義の預金の一部が原告のために費消されていること、市川専務は、査察調査において、右給料手当が架空であることを認めた上、本件事業年度(昭和六二年一一月期)以後の二事業年度(昭和六三年一一月期及び平成元年一一月期)については、千代田及び中沢に対する給料手当としていた額を所得金額に加算した修正申告に応じていること等の事情に照らし、到底採用することができない。

(二) 受取利息について

千代田及び中沢名義の前記各預金口座(千代田名義の普通預金から派生した定期積金等を含む。)が原告に帰属するものであることは右(一)のとおりであるから、同預金に係る受取利息等についても原告に帰属することは明らかである。したがって、右金額に、その各年の収入額につき争いのない本件手数料収入口座、本件敷地使用料収入口座及び本件固定資産税等還付金口座に係る昭和六二年一一月期の利子を合計した一〇万二三五七円(別表五参照)を益金として原告の所得金額に加算すべきである。

(三) 寄付金について

(1) 前記争いのない事実に証拠(甲三ないし五、六の1ないし5、七の1ないし15、八、九、乙九、一〇、一二、一三、一七ないし二六、四〇ないし四五、四六の1ないし5、四七ないし五六、証人市川勇、原告代表者本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、次のとおりの事実が認められる。

ア 原告(旧商号株式会社市川)は、昭和四七年五月、宇都宮市を本店(支店東京都台東区、静岡県三島市、栃木県大田原市及び福島県いわき市)として設立され、主として不動産の販売及びその関連事業(測量、建設、造園等)を行っていた株式会社である。本件当時、代表取締役は市川之一(長男)、専務取締役及び常務取締役は、いずれも同人の実弟である市川勇(三男。同人は、土地家屋調査士の資格を用いて原告の仕事をしていた。)及び市川亮(四男)であってた。

設立当初は栃木県内を中心として事業展開していたが、昭和五六年九月に福島県いわき市の大規模宅地分譲事業(泉ケ丘ハイタウン)に着手し、本件当時は右事業が原告の事業の中心となっていた。原告は、同年八月、泉ケ丘ハイタウンの販売会社として、現地に日本都市開発(本店福島県いわき市、支店宇都宮市及び東京都台東区、代表取締役市川之一)を設立した(甲三)。また、昭和六一年一一月には、不動産の売買、家具・貴金属・毛皮等の販売等を目的としてジャパンオール(本店福島県いわき市)を設立した。原告、日本都市開発及びジャパンオールの代表取締役はいずれも原告代表者市川之一である。

イ 本件不動産は三芳が所有するJR有楽町駅前の雑居ビル(当時、映画館、店舗等六名の賃借人が使用していた。)及びその敷地(当時、鹿島建設株式会社の所有名義となっていた。なお、右土地のうち、祖浜はるに賃貸した二八・五一平方メートル〔実測値。乙四〇参照〕を除いた部分を本件売買契約の対象とした。)である。原告は、清和の社長である兼子清を通じて三芳が本件不動産の売却を希望していることを知り、これを転売目的で購入することとした。

売買契約の交渉は、主として三芳の代理人である鈴木醇一弁護士(以下「鈴木弁護士」という。)と原告代表者及び原告取締役の中山克巳(本件当時、事業本部長。以下「中山事業本部長」という。)との間で行われた。当初は、賃借人らを三芳側で立ち退かせることを前提とし、代金一一五億円とする方向であったが、権利関係が複雑なこと、右立退きに相当の時間を要する見込みであること等の理由から、現状有形(いわゆる居抜き)による売買に変更され、代金を六九億円(当初の代金一一五億円の六割)とすることとなった。その後、契約の直前になって、原告の希望により、買主をジャパンオール(前記のとおり、同社は、原告代表者が代表取締役を努める原告の関連会社である。)とし、原告はジャパンオールから更に買い受ける形にすることとなった。

一方、原告は、本件不動産の転売先を見つけるべく、オリエント・リースに依頼した。オリエント・リースは、株式会社大和銀行(東京不動産部。以下「大和銀行」という。)を通じて喜多商事(同社は、不動産賃貸及び管理を主たる業務とする会社である。)を知り、本件不動産の買主として原告に紹介した。原告は、昭和六二年六月二六日、オリエント・リースとの間で<1>手付金一〇億円の借入のあっせん、<2>本件不動産に係る関係法令の調査、<3>本件不動産に係る契約書の作成、査収、<4>本件不動産の測量、分筆及び境界確認、<5>購入、転売に係る権利の移転、抹消書類の指示、<6>本件不動産の賃借人に係る賃貸借契約の内容の調査及び契約書の査収等を委託内容とし、報酬を二億五〇〇〇万円とする業務委託契約を締結した(甲五)。原告は、その後、オリエント・リースに対し、右報酬二億五〇〇〇万円を支払った。

三芳は、昭和六二年六月三〇日、ジャパンオールとの間で、本件不動産を代金六九億円で一括譲渡する旨の売買契約(本件第一契約)を締結し(乙一七)、さらに、ジャパンオールは、同日、原告との間で、本件不動産を代金八〇億円で売り渡す旨の売買契約(本件第二契約)を締結した(乙一八)。また、同日、原告と喜多商事との間で、本件不動産に関する協定書(売買予約を内容とするもの。実測売買等の条件が付されていた。)が交わされた。

ウ 原告は、前記協定書の条件を充たすため、昭和六二年七月九日、内藤測量に対し、本件土地の測量、調査、登記等を内容とする業務委託契約を締結した。内藤測量は、本件土地の測量、境界の確認、登記申請等を行った。また、この間、本件不動産に係る滞納処分の差押を解除する手続等が行われた。原告は、本件第三契約の条件である右のような手続を完了したことから、同年九月一八日、喜多商事との間で、オリエント・リースが媒介者となって本件不動産を代金九〇億四一四〇万円で一括譲渡する旨の売買契約(本件第三契約)を締結した(乙一九)。

エ 原告代表者は、昭和六三年八月八日(原処分調査時)、被告に対し、日本都市開発の従業員は本件不動産の取引に関し、とくに従事しなかったこと、仲介手数料は、同人が日本都市開発の代表取締役であること及び同社東京支店において本件不動産に関する全ての事務を行ったことから支払ったこと、仲介手数料の算定根拠はとくにないこと等を内容とする上申書を提出した。

オ 鈴木弁護士は、平成元年八月八日(本件異議申立期間にあたる。)、中山事業本部長の依頼により、本件第一契約に係るジャパンオール宛の事実証明書(甲六の1ないし4)を作成、手交した。右事実証明書には、本件第一契約の当初、三芳側は土地代金を四〇パーセント相当額、建物代金を四〇パーセント相当額、借家権・営業権等を四〇パーセント相当額として取引するとの条件を提示した旨が記載されているが、鈴木弁護士は、中山事業本部長に求められるまま、同人が作成した文案に押印したに過ぎず、その内容については確認しなかった。

(2) 右(1)に認定した事実に基づいて、日本都市開発及び清和に対する仲介手数料について検討する。

ア 日本都市開発について

本件不動産に係る取引の経緯は右(1)に認定したとおりであって、当初は原告が三芳から本件不動産を直接買い受ける前提であったのに、契約直前になって原告の希望により関連会社であるジャパンオールを両者間に介在させることとなり、その結果、三芳、原告間に締結されるべき売買契約が本件第一契約及び本件第二契約という形式を採ったに過ぎないから、本件第二契約につき日本都市開発が仲介行為を行う必要はそもそも認められない。そして、右事実に、原告代表者が「日本都市開発の社員は本件不動産の取引に関し、とくに従事していない旨」を記載した前記上申書を提出していること、日本都市開発の従業員が仲介業者に携わったとする客観的資料が何ら提出されていないこと(原告は、国税不服審判所に対し、この点の証拠資料として従業員の出勤簿を提出したが、これのみでは従事した業務の内容は判明しえない。)、本件土地の隣接地権者及び賃借人ら(日本都市開発が隣接地権者や賃借人らとの接触なしに前記業務を行ったとは考え難い。)がいずれも日本都市開発の存在を知らない旨答述していること等を併せ考えると、本件不動産の取引に関し、日本都市開発が仲介行為を行ったとは認められない。

右説示に反する原告の主張は採用することができない。なお、原告は、この点を立証するものとして、重要事項説明書(甲七の1ないし15)、委任契約書(甲八)及び覚書(甲九)等を提出するが、右重要事項説明書は、添付書類である不動産登記簿謄本が謄本の認証部分のないコピーであったり、右時点ではいまだ判明していないはずの本件土地の実測値(前に認定したとおり、本件土地の実測は、本件第二契約後本件第三契約までの間に内藤測量が行ったものである。)が記載されているなど、その体裁が極めて不自然であり、本件第二契約当時作成されたとは考えられない。また、右委任契約書(代理権授与の形式となっている。)及び覚書作成の時点においては、すでに本件第二契約及び本件第三契約は締結済みであったから、右書面をもって、原告が日本都市開発に対し、本件第二契約の仲介行為を委任したとは到底認め難い。

そうすると、原告は、売買契約書の仲介業者欄に日本都市開発を記載した上、前記重要事項説明書(右に説示したところに照らし、内藤測量の実測後に作成されたものと推認される。)、委任契約書及び覚書等を作成したりするなど、あたかも同社が本件第二契約に関し仲介行為を行ったかのごとく仮装したものと認めるのが相当である。

イ 清和について

原告は、清和とジャパンオールとの間で、ジャパンオールが本件不動産を他に譲渡するときは、清和に仲介を依頼する旨の約束を交わしており、清和が数社との間で商談を進めていたのであるから、同社に対し支払った一一〇〇万円の仲介手数料は正当な対価である旨主張する。しかしながら、本件不動産に関する取引の経緯については前記(1)に認定したとおりであって、清和がこれに関し、仲介行為を行った事実は何ら認められない(なお、原告は、本件第一契約の当事者ではないから、これに関する仲介手数料については、そもそも問題とならない。)。また、清和とジャパンオール間の右約束によって原則が拘束されるべき理由は存しないから、原告の主張には理由がないことが明らかである。

(3) したがって、日本都市開発及び政務に対する仲介手数料には対価性が認められないから、法人税法三七条に規定する寄付金と認定すべきであり、その算入限度額を超える部分一億二九二一万二八四九円(その計算根拠は別表六参照)については、これを損金に算入することはできないから、これを原告の所得金額に加算すべきである。

(四) 以上によれば、別表九のとおり、原告の所得金額は、本件更正(裁決により一部取り消された後のもの)の所得金額と同額(一億八二九八万七〇九九円)であると認められる。

2  課税土地譲渡利益金額について

本件土地に係る課税土地譲渡利益金額は、(一)譲渡収益の額から(二)譲渡原価の額及び(三)直接又は完結に要した経費の額を控除して算出されるものである。以下、それぞれについて順次検討する。

(一) 譲渡収益について

(1) 譲渡対価の区分について

ア 前記1(三)に認定した事実及び証拠(乙一七ないし二一、原告代表者本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次のとおり認められる。

(ア) 本件第一契約及び本件第三契約に係る契約書中には、土地・建物の譲渡価額が区分されておらず、本件第二契約においてのみ土地代金を二七億円、建物代金を五三億円として一括取引する旨の特約条項が記載されている。

(イ) 本件第一契約の売主である三芳の担当税理士は、関東信越国税局長からの照会に対し、右契約においては、土地・建物の譲渡価額を区分することなく、本件不動産を一括して譲渡したものであり、確定申告においても両者を区分していない旨を回答している(乙二〇)。

(ウ) 本件第三契約の買主である喜多商事(前に認定したとおり、同社は、不動産賃貸及び管理を主たる業務とする会社である。)は、昭和六二年四月一日から昭和六三年三月三一日までの事業年度の法人税の確定申告書の内訳書において、本件不動産の帳簿価額(昭和六三年三月三一日現在)を、本件土地につき九一億四〇四三万〇六六五円(本件不動産の合計額の約九八・〇四パーセント)、本件建物につき1億八二三一万六五八五円(本件不動産の合計額の約一・九六パーセント)として計上している(乙二一)。

(エ) 本件建物は、原告は譲渡時点において、すでに建築後三二年以上を経過し、かなり老朽化していた。

(オ) 昭和六二年度における本件不動産の固定資産税及び都市計画税の課税標準額は、本件土地につき四億八一一四万五〇〇〇円、本件建物につき九五九万七〇〇〇円であり、その合計額に対する本件土地の割合は約九八・〇四パーセント、本件建物の割合は約一・九六パーセントであった。

イ 右アに認定した事実によれば、本件第一契約の売主である三芳は、本件建物の価値と本件土地の価値との区分をとりたてて考慮せずに本件不動産を一括譲渡したものと認められる。

もっとも、鈴木弁護士が作成した本件第一契約に係る前記事実証明書添付の不動産売渡承諾書(甲六の2)には、「売渡物件は、売渡精算価格に対して、土地代金を二〇パーセント相当額、建物代金を四〇パーセント相当額及び借家権・営業権等を四〇パーセント相当額として取引する」旨の記載があるが、前記1(三)に認定したとおり、鈴木弁護士は、中山事業本部長にいわれるまま、同人作成の文案に押印したに過ぎないから、右事実証明書の信用性自体はなはだ疑問である。また、仮にこれが信用しうるものであったとしても、その記載自体から明らかなように、本件第一契約は右不動産売渡承諾書のとおり作成されたものではないから(甲六の2の不動産売渡承諾書記載の条件を提示し、さらに折衝を重ねた結果、甲六の3の不動産売買契約書〔本件第一契約書。右契約書において代金の区分が明示されていないことは前に認定したとおりである。〕のとおり売買契約が成立したとする。)、結局、右事実証明書は、単に契約締結に至る過程において、三芳側が右のような条件を提示した事実の存在を証明するものに過ぎず、これによって、原告主張の如き譲渡対価の区分の合意が存したとはなし難いというべきである。

ウ ところで、土地及び建物を一括譲渡した場合には、その譲渡対価の額を土地に相当する部分と建物に相当する部分とに合理的に区分すべきところ、譲渡に際し、土地及び建物に係る価格が明確にされず、しかもそれぞれの時価を算定するに足りる客観的資料のない場合においては、当該不動産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準額をもとに按分計算するのが相当というべきである。けだし、右課税標準額は、土地(補充)課税台帳又は家屋(補充)課税台帳等に搭載されたものであって、この場合の土地又は家屋の価格とは、土地にあっては売買実例価額、家屋にあっては再建築価額を基礎として客観的に評価されるものであるから、土地及び家屋の区分割合を算定する方法として合理性を有するといえるからである。もっとも、固定資産税等の課税標準額自体は、個々の不動産について必ずしも時価(実勢価額)と一致するものではないが、それが客観的かつ一律の基準による専門家の評価を経たものであることに照らすと、全体としては時価を反映した価額ということができ、したがって、土地及び建物の価額の割合が問題とされている本件の区分計算の方法としては、十分な合理性を有するものと認められる。

なお、原告は、この点に関し、固定資産税等の課税標準額における土地は、自用地か貸地であるかの条件を考慮されず、更地価格で評価されており、本件のように貸家の用に供している土地については何ら斟酌されていないから、本件において固定資産税の課税標準額をもとにした被告の区分計算の方法には合理性がない旨主張する。しかしながら、本件第一契約ないし本件第三契約は、前記認定のとおり、いずれも本件不動産を現況有形(いわゆる居抜き)のまま一括譲渡したものであるから、その対価は、本件土地の所有権の価額(更地価額)と本件建物の所有権の価額(建物価額)の合計額にほかならない。そうすると、本件土地を更地として評価したことをもって不合理とはなし得ないから、原告の右主張は失当である。

エ これについて本件をみるのに、前記説示のとおり、本件は、譲渡に際し、土地及び建物に係る価格が明確にされず、しかもそれぞれの時価を算定するに足りる客観的資料のない場合であるから、本件不動産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準額をもとに、本件土地の価額を本件不動産の合計額の九八・〇四パーセント、本件建物の価額を一・九六パーセントと按分計算した被告の区分方法は合理的かつ適正であると認められる(右方法による結果は、前記認定のとおり、喜多商事の帳簿価額の割合と同じである。また、原告代表者自身、本人尋問において、本件建物自体ではさほど価値がなく、喜多商事の右帳簿価額〔約一億八〇〇〇万円〕程度である旨供述している。)。

オ これに対し、原告は、本件第一契約において、土地代金を三三・三パーセント、建物代金を六六・七パーセントとして取引する旨の相互協議があったから、本件不動産の譲渡対価の区分計算もこれに従うべきである旨主張するが、前記イに説示したとおりであって、かかる相互協議の存在は認められないから、右主張は採用できない。また、原告は、仮に右方法が採用できないとしても、収益還元による方法ないし投資効率による方法によって本件建物の価額を算定し、右価額を本件不動産の譲渡総額から控除する方法により区分計算すべきである旨主張するが、原告の右計算方法は、その基礎としている家賃収入に本件土地からの収益に係る分が含まれているにもかかわらず、あたかもそれが本件建物のみを賃貸することにより発生するとの前提に立っている点においてすでに失当であるから(すなわち、右計算方法によれば、本件建物の価額を過大に、本件土地の価額を過少に評価する結果となる。)、本件不動産の譲渡価額の区分方法としては合理性がなく、採用することができない。

カ したがって、被告が、本件不動産の譲渡対価の額を、本件不動産に係る固定資産税等の課税標準額をもとに算定した割合(本件土地につき九八・〇四パーセント、本件建物につき一・九六パーセント)により区分計算したことは相当である。

(2) 譲渡収益の額

右(1)に説示したとおりであるから、本件土地の譲渡収益の額は、本件不動産の譲渡対価の額九〇億四一四〇万円に九八・〇四パーセントを乗じた八八億六四一八万八五六〇円である。

(二) 譲渡原価の額

(1) 本件土地の譲渡原価の額は、次のとおり七九億〇七五四万六四〇〇円である。

ア 購入価額 八七億四三二〇万円

原告が本件第二契約に基づきジャパンオールから購入した本件不動産の購入価額八〇億円に前記の区分計算による本件土地に係る割合九八・〇四パーセントを乗じて算定すると頭書金額となる。

イ 土地測量費 二五八万一二〇〇円

内藤測量に対して支払った金額である(争いがない)

ウ 保証金負担分 六一七六万五二〇〇円

原告は、本件第二契約に際し、ジャパンオールから預り保証金相当額六三〇〇万円(本件建物の賃貸に伴い、賃借人らから預かった保証金)を受け取ることなく、その返還義務を引き継いだものと認められるから、右金額に前記の区分計算による本件土地に係る割合九八・〇四パーセントを乗じて算定した頭書金額を譲渡原価の額に算入ずべきである。

エ 譲渡原価の額 七九億〇七五四万六四〇〇円

アにイ及びウを加算すると当初金額となる。

(2) なお、原告は、この点につき、業務委託費、借入利息、仲介手数料及び固定資産税負担分(減算)につき被告と異なる計算方法を主張するので、順次検討する。

ア 業務委託費

前記認定事実、証拠(乙一八、一九、四四)及び弁論の全趣旨によれば、本件第二契約の契約書の仲介業者欄にはオリエント・リースの記載がないものの、本件第三契約の契約書においては、オリエント・リースが媒介者として表示されていること、オリエント・リースの塩田善康が、原告、オリエント・リース間の業務委託契約(甲五)の主旨は「喜多商事がつけた条件をきちんと満たし、物件が何も問題なく喜多商事に渡ること」である旨述べていること、右業務委託費は、原告の昭和六二年一一月期の所得金額の計算上、年金として算入されていることが認められ、これらの事情を総合すれば、右業務委託契約は、本件不動産を喜多商事の提示する条件に違背することなく喜多商事に引き渡すために締結されたものであると認められるから、右契約に係る業務委託費二億五〇〇〇万円は、本件不動産の譲渡(本件第三契約)に係るものであって、これを本件第二契約における譲渡原価の額に算入することはできないというべきである。

イ 借入利息

オリエント・リースに対する借入利息は、本件不動産を購入するための借入金に係る利息と認められるから、これを負債利子として後記(3)アのとおりの経費とすべきであり、譲渡原価の額に算入することができないことは明らかである。

ウ 仲介手数料

前記認定のとおり、日本都市開発及び清和が仲介業務を行った事実は認められないから、右両社に対する仲介手数料を譲渡原価の額に算入することはできない。また、フジタ工業は、オリエント・リース(塩田善康)から本件不動産の購入を持ちかけられ、これを大和銀行(本件第三契約における媒介者)に伝えたものであって、右仲介行為は本件不動産の譲渡(本件第三契約)に係るものと認められるからフジタ工業に対する仲介手数料を本件第二契約における譲渡原価の額に算入することはできない。

エ 固定資産税負担分(減算)

原告が喜多商事から受け取った固定資産税相当額は、固定資産税は代金完済の日からは買主の負担とするという両者の間における契約に基づき受領したものであるが、これは購入価額から控除すべきものではないから、譲渡原価の額から減算する必要はない。

(3) 直接又は間接に要した経費の額 六五八九万六二二〇円

本件土地の譲渡のために直接又は間接に要した経費の額は、次のア及びイの合計額である。

ア 負債利子の額 三、九五三万七七三一円

前記(二)(1)の譲渡原価の額七九億〇七五四万六四〇〇円に保有期間である一月を乗じ、これを一二で除した上、一〇〇分の六を乗じて計算した金額である。

イ 販売費及び一般管理費 二六三五万八四八八円

前記(二)(1)の譲渡原価の額七九億〇七五四万六四〇〇円に保有期間である一月を乗じ、これを一二で除した上、一〇〇分の四を乗じて計算した金額である。

(4) 本件土地に係る課税土地譲渡利益金額 八億九〇七四万五九四〇円

前記(一)(2)から(二)の(1)及び(3)を控除すると頭金金額となる。

(5) 本件土地以外の土地に係る昭和六二年改正前措置法六三条に係る譲渡利益金額の合計額 二三八万四八一二円

右金額は、確定申告に係る金額である(争いがない。)。

(6) 昭和六三年改正前措置法六三条の二に係る譲渡利益金額の合計額一九七万二六四一円

右金額は、確定申告に係る金額である(争いがない。)。

(7) 原告の課税土地譲渡利益金額 八億九五一〇万二〇〇〇円(国税通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数切り捨て。)

原告の課税土地譲渡利益金額の合計額は、前記(4)ないし(6)の合計額である(前記(4)及び(5)の合計八億九三一三万円と前記(6)の一九七万二〇〇〇円の合計額)。

3  以上に説示したところによれば、原告の昭和六二年一一月期の所得金額及び課税土地譲渡利益金額は、いずれも本件更正(裁決により一部取り消された後のもの)の金額と同額であるから、本件更正は適法である(その余の部分については当事者間に争いがない。)。

二  争点2(本件各重加算税賦課決定の適否)について

1  国税通則法六八条一項は、同法六五条一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときは、当該納税者に対して、過少申告加算税に代えて重加算税を課する旨規定する。

2  以下、隠ぺい、仮装の行為の有無につき、各項目ごとに検討する。

(一) 給料手当について

前記一1(一)に認定したとおり、原告は、千代田礼子名義の給与手当については昭和五九年一一月期から昭和六二年一一月期まで、中沢和子名義の給与手当については昭和六一年一一月期及び昭和六二年一一月期に、それぞれ簿外預金(千代田名義口座及び中沢名義口座)を用いて本件給料等を正当な対価として支払ったかのような外形を創出し、これに基づいて過少に申告したものであるから、これが国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい」又は「仮装」にあたることは明らかである。

(二) 手数料収入について

(1) 証拠(乙八、九、五七ないし六四、六六、証人市川勇)を総合すれば、原告が市川専務の有する土地家屋調査士の資格を利用して行った土地建物の登記等に関する手数料収入は、昭和六〇年一二月までは、田沼名義口座(東邦銀行小名浜支店の株式会社市川所長田沼勇名義の普通預金口座。口座番号二六九七四二)に入金され、原告は、これを益金の額に算入して申告していたこと、市川専務の指示により、本件手数料収入口座を開設した昭和六一年一月一六日以降、昭和六三年七月二〇日までの間に、多数の手数料収入(未収分を除く。)が本件手数料収入口座に継続的に入金され、他方、田沼名義口座には入金されていないこと、本件手数料収入口座からは、その一部が払い戻され、市川勇名義の定期預金がいわき信用組合に三口、常陽銀行湯本支店に一口、千代田礼子名義の定期預金が大東相互銀行湯本支店に一口それぞれ設定されていること、本件手数料収入に係る領収証控えは原告において保管されていたことが認められる。

(2) 右事実を総合すると、原告は、本件手数料収入があったことを認識していたにもかかわらず、あえて簿外の本件手数料収入口座を開設し、本件手数料収入を昭和六〇年一一月期から昭和六二年一一月期まで右口座に入金する方法により除外していたものと認められるから、国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたると認めるのが相当である。

なお、原告は、本件手数料収入を益金の額に算入せず確定申告したのは、原告の従業員が経理担当者への報告を怠っていたためである旨主張するが、右説示に照らし、到底採用することができない。

(三) 雑収入について

(1) 家賃広告収入について

証拠(乙八ないし一〇、一八、一九、二三、二四、六六)を総合すれば、本件不動産は、三芳からジャパンオールに、ジャパンオールから原告に、原告から喜多商事にそれぞれ順次売買され、本件不動産に関する建物前受賃貸料三三五万円及び前受看板広告料二四四万七〇〇〇円の合計五七九万七〇〇〇円は、本件不動産から生じる収益であること、ジャパンオールの代表取締役は、原告代表取締役と同一人であること、本件第二契約及び本件第三契約における契約書には、いずれも本件不動産の引渡日をもって本件不動産から生じる収益は、買主に帰属する旨の合意記載がなされていること、現に三芳からジャパンオールに右五七九万七〇〇〇円が支払われ、原告から喜多商事に右五七九万七〇〇〇円を支払っており、原告はジャパンオールからの七九万七〇〇〇円のみを益金の額に計上していることが認められる。

右事実を総合すると、原告は、本件不動産から生じる収益である本件家賃広告収入について、益金の額に算入すべきことを認識していたにもかかわらず、あえてこれを益金の額から除外していたものといわざるを得ず、国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたると認めるのが相当である。

(2) 敷地使用料収入について

証拠(乙八ないし一〇、六五、証人市川勇)を総合すれば、原告は、本件敷地使用料収入以外の敷地使用料については、従来、田沼名義口座に入金し、これを益金の額に算入して確定申告していること、しかるに、本件敷地使用料収入は、昭和五九年一〇月四日に開設された本件敷地使用料収入口座に入金し、これを益金の額に算入していないこと、本件敷地使用料収入口座への入金は、本件敷地使用料収入及び預金利息のみであり、右口座はその専用の口座と認められることが認められ、これによれば、原告は、本件敷地使用料収入があったことを認識していたにもかかわらず、あえて簿外の本件敷地使用料収入口座を開設し、昭和五九年一一月期から昭和六二年一一月期まで右口座に入金する方法により除外していたものと認められるから、国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたると認めるのが相当である。

なお、原告は、本件敷地使用料収入が計上漏れとなったのは、田沼勇が過失により経理事務処理を失念していたためである旨主張するが、田沼勇が原告を退職した昭和六〇年四月一五日以降も、五回にわたって本件敷地使用料収入口座からの払い戻しがあること(乙六五)、本件敷地使用料収入口座はその専用口座と認められること等に照らし、到底採用できない。

(3) 固定資産税等還付金について

証拠(乙八ないし一〇、六六、証人市川勇)を総合すれば、本件固定資産税等還付金は、昭和五九年七月一二日に開設した簿外の本件固定資産税等還付金口座に入金されていること、本件固定資産税等還付金は、原告の申請に基づき還付されたものであること、本件固定資産税等還付金口座は、本件手数料収入口座及び本件敷地使用料収入口座と同様、原告の市川専務の指示により開設されたことが認められ、右事実を総合すると、原告は、本件固定資産税等還付金については、これがあったことを認識していたにもかかわらず、簿外の本件固定資産税等還付金口座を開設し、これに入金させる方法により除外していたものと認められる。

なお、原告は、本件固定資産税等還付金についても、これが計上漏れとなったのは、担当者が過失により経理事務処理を失念していたためである旨主張するが、本件固定資産税等の還付を受けるためには、申請や振込口座の指定等の手続を要し、これらの手続をした原告においては、その入金があったことを当然認識しえたものであることから、原告は、本件固定資産税等還付金を簿外の普通預金口座である本件固定資産税等還付金口座を開設し、これに入金させる方法により除外していたものと認められる。したがって、原告のこれらの行為は、国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたると認めるのが相当である。

(4) 保険金収入について

証拠(乙八ないし一〇、六六、証人市川勇)を総合すれば、本件保険金収入は、昭和五九年七月一二日に開設された本件固定資産税等還付金口座に入金されていること、右口座は、本件手数料収入口座及び本件敷地使用料収入口座と同様、市川専務の指示により開設されたこと、受取保険金の起因となった保険事故は、原告所有の車両の被害事故及び市川専務の病気入院であることが認められ、右事実を総合すると、原告は、本件保険金収入については、これがあったことを認識していたにもかかわらず、簿外の本件固定資産税等還付金口座を開設し、これに入金させる方法により除外していたものと認められる。

なお、原告は、本件保険金収入についても、これが計上漏れとなったのは、担当者が過失により経理事務処理を失念していたためである旨主張するが、保険金の給付を受けるためには、申請や振込口座の指定等の手続を要し、これらの手続をした原告においては、その入金があったことを当然認識しえたものであることから、原告は、本件保険金収入を簿外の普通預金口座である本件固定資産税等還付金口座を開設し、昭和五九年一一月期及び昭和六一年一一月期に右口座に入金させる方法により除外していたものと認められる。したがって、原告のこれらの行為は、国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたると認めるのが相当である。

(四) 受取利息について

前記一1の(一)及び(二)に認定したとおり、本件受取利息の元本である普通預金(千代田名義口座、中沢名義口座、本件手数料収入口座、本件敷地使用料収入口座及び本件固定資産税等還付金口座)および定期積金等(千代田名義口座からの振替に係る定期預金及び定期積金)は原告に帰属するものであり、かつ、元本である右普通預金等の設定が国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたると認められる以上、併せて除外されている法定果実である本件受取利息についても、昭和五九年一一月期から昭和六二年一一月期まで同項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたると認めるのが相当である。

(五) 寄付金の損金不算入額について

前記一1(三)に認定したとおり、原告は、日本都市開発が仲介行為を行った事実が存しないのに、あたかも存したかの如く仮装し、これに基づいて過少申告をしていたものであるから、国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」にあたることが明らかである。

3  原告は、昭和五九年一一月期ないし昭和六一年一一月期の法人税の各更正については不服申立を行っておらず、また、昭和六二年一一月期の法人税の更正(本件更正)が適法であることは前記一に説示したとおりである。そして、右各更正により、納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、原告につき、国税通則法六五条四項に規定する正当な理由があるとは認められず、さらに、原告は、右2に説示したとおり、法人税の課税標準額又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき法人税の確定申告書を提出したものと認められるから、これらの事実に係る部分の税額について、国税通則法六八条一項の規定に基づき、過少申告加算税に代えてなされた本件各重加算税賦課決定(裁決により一部取り消された後のもの)は適法である。

三  争点3(本件過少申告加算税賦課決定の適否)について

本件更正が適法であることは、前記一に説示したとおりであるところ、本件更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、原告に国税通則法六五条四項に規定する正当な理由があるとは認められないから、昭和六二年一一月期につき前記二の重加算税の対象とされた税額以外の税額(同法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨て後の金額)に対して、同条一項の規定に基づいてなされた本件過少申告加算税賦課決定(裁決により一部取り消された後のもの)は適法である。

四  争点4(本件青色申告承認取消処分の適否)について

法人税法一二七条一項三号が青色申告承認取消事由として規定する「隠ぺい又は仮装」の意義は、国税通則法六八条にいう「隠ぺい又は仮装」と同義と解されるところ、前記二に説示したとおり、原告は、昭和六二年一一月期に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記載していることが認められるから、同号の規定に基づきなされた本件青色申告承認取消処分は適法である。

五  結論

よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島内乘統 裁判官 角井俊文)

物件目録

一 所在 千代田区有楽町二丁目

地番 九番五

地目 宅地

地積 二八一・六一平方メートル

二 所在 千代田区有楽町二丁目

地番 九番一〇

地目 宅地

地積 七九・〇〇平方メートル

右土地のうち、祖浜はるに賃貸した部分を除く五〇・四九平方メートルの部分

三 一棟の建物の表示

所在  東京都千代田区有楽町二丁目九番地

構造  鉄筋コンクリートブロック造陸屋根二階建

床面積 一階 三〇九・二八平方メートル

二階 二九八・九七平方メートル

専有部分の建物の表示

家屋番号 有楽町二丁目第九番の二一

建物の番号

種類  店舗

構造  鉄筋コンクリートブロック造陸屋根二階建

床面積 一階 二六一・三八平方メートル

二階 二九七・九七平方メートル

四 一棟の建物の表示

右三に同じ

専有部分の建物の表示

家屋番号 有楽町二丁目第九番の二二

建物の番号

種類   店舗

構造   鉄筋コンクリートブロック造陸屋根一階建

床面積  四七・九〇平方メートル

別表一

昭和五九年一一月期

<省略>

別表二

昭和六〇年一一月期

<省略>

別表三

昭和六一年一一月期

<省略>

別表四

昭和六二年一一月期

<省略>

別表五

<省略>

別表六

寄付金の損金不算入額の計算

<省略>

別表七

期待される総収益の計算(請求人の計算額)

<省略>

別表八

所得金額の計算

<省略>

別表九

<省略>

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